南インド、人生の転換期






私の人生の分岐点にある場所のひとつ、南インド。

初めて行ったのはかれこれ15年くらい前、まだ20代前半。

南インド料理を勉強している友人が現地に長期滞在して料理を習うというので、
行ってみようかな?と口に出してから3日でチケットを取り、
勢いよく初めてのインドに1か月。

普通の一軒家で(Airbnbなんてお洒落なものではない)水シャワーの現地の暮らし。

毎晩、大きな鍋にお湯を沸かしてお風呂場に運んで体を洗ってたな。

雨季の南インドはほぼ毎日雨で、停電してた。

毎日誰かしらのお家に呼んでもらっておいしい南インド料理を食べて、
ローシーズンで暇してるインド人とおしゃべり。

初めてのヨガもここで。

なんとなく仲良くしているインド人に「ヨガやってみたい。」と気軽に言ったら、
毎朝5時にヨガの先生が家に来ることになった。

聞いたこともないマントラを初めて唱えてその気持ちよさの虜に。

インドの石造りの家に響く、低いマントラの倍音の癒し効果といったらない。

そして先生が毎日買ってきてくれる新鮮なジャスミンを手のひらに乗せて呼吸法。

今思い返すとなんとも贅沢な時だったけど、
押し寄せる蚊の大群で、ポースには全く集中できなかったのが実際。

日本から来た友人と合流し、スパイス農園に遊びに行った。

特にその頃スパイスに興味があったわけではないけれど、観光地のルートに組み込まれていたみたい。

すっかり南インドの素晴らしさとご飯のおいしさに魅了されて、
仕事でインドに来たい!と盛り上がり、みんなでスパイス屋を始めることになった。

20代はやりたいこともなく、好きなこともなく、仕事するのも大嫌いだった自分が、
初めて情熱を持てたオンラインストア。

そこから出店したりチャイ屋さんをやったり、何かを始めることで人生ってパッと変わる。

やりたいことが何にもなかった私が、やりたいことで溢れるようになった。


そして2度目は7年前、人生にいろいろ行き詰まって、
ヨガ初心者なのに南インドのシヴァナンダヨガアシュラムへ2週間。

誰に言っても信じてもらえないのですが、私は臆病なので、
今考えるとよくヨガも出来ないのに行ったなと。

それでも国立公園の中にあるアシュラムは楽園のようで、
こちらでも毎朝5時に起きてマントラと瞑想とグルの話。

シヴァナンダヨガのマントラはみんなで楽器を持って歌うのだけど、
最初は何が何やら見よう見まねだったのが、
数日で前の方に座って楽器を持って大きな声を出してた。

動物がたくさん鳴いて、マントラと混ざって、
その中で夜が明けていく様子は毎朝感動するほどの美しさだった。

午前に2時間、午後に2時間のヨガ。

ごはんは全員一緒に輪になって座り、バナナの葉で食べるミールス。

南インドで一番おいしい、とみんなが言うくらい毎日最高に美味しかった。

そんな生活を2週間続けて、アシュラムを出る最終日。

一緒にヨガをしていた友人が「生理になったからアヴィヤンガ譲るよ~!」と言ってくれて、
2時間のアヴィヤンガを受けた。

アヴィヤンガはアーユルヴェーダのオイルマッサージで、
2人一組でマッサージされるのだけど、気持ち良いというよりまな板の鯉的で笑えてしまう。

マッサージが終わって、オイルで身体中ツルツル、心もまっさらな状態でタクシーに乗った。

タクシーの窓から見える南インドの自然、
大きな椰子の木とたまに現れる小さな町で手を振ってくる子供達。

それまでは年に1度の旅行でなんとか我慢してきたけど、
こんなに美しいものを知ってしまって、私はもう元の生活に戻れないな、
と仕事を辞めてタイに引っ越すことを決心した。

すっかり現実と切り離されて、自分の意識だけが強くそこにあったからできたこと。

あの時の、あの瞬間の気持ちは今でもありありと思い出せる。

何度思い出しても泣きたくなる瞬間。

人生には何度も分岐点があって、決めるまでは本当に苦しいし悩む。

勇気を出して変えた行動が、必ず未来を切り開くのだけど、何度やっても足元がすくむ。

いつも過去の自分によく頑張ったね、って声をかけて、
さて、これからも頑張るぞ。


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