カレン族の住む村へ2/カレンシルバー工房にて
ざっくりした説明を元に仏塔を目指し、ゆっくり車を走らせるとそれらしいお店が見えてきた。
話をすると最初は「へ〜」という雰囲気だった店番の女性(職人の奥さん)が、真剣だと察したようで職人である旦那さんを呼び出してくれた。
その日と翌日に渡ってカレンシルバーを実際に作って見せてくれ、いろんな質問に答えてもらった。
職人さんの名前はヌットさん、40歳。
子供の頃から村でシルバー作りをしていたけれど、村では工具も少なく伝統的な型(作りが単純なもの)しか作れないため、20歳すぎてからカレンシルバー以外のジュエリーも扱う大きな工場で働きながらさまざまな技術を身につけた。
10年ほど前に独立しそれからはカレンシルバーのみを製作している
原材料のシルバーを仕入れる余裕がなく、お店からオーダーを受けた分だけの銀を買い製作しているそう。
どんなお店に卸しているか聞いてみると、教えてくれた2つのお店がどちらもここ数年ずっと通っているお店で、(他のお店では買ったことがないほど)いろんなお店を回ったけれどここ、という直感が当たっていたこと、工場生産しているのではないかという疑問が一気に晴れた瞬間だった。
『お店の人に聞いても、どこで作っているか教えてくれないでしょう?』
そう、その通り、みんなカレンの村というけれど教えてはくれない。
でもこうやって行動して、その大元に出会えたことにここ最近ないくらい感動した。
聞いてみたかったこと、例えば、同じカレンシルバーでも黒っぽいものと白っぽいものがあるのは何故か?と聞くと『模様のあるものや凹凸のあるものは、それをくっきりさせるために液体(おそらく化学反応で酸化し黒くなるもの)に浸けてから磨くと、こういう内側だけ黒く残るでしょう』と私の付けているリングを見て説明してくれた。
この黒っぽい状態がデザインに陰影をつけて立体感とカレン族の持つ独特の雰囲気を醸し出していることにも気がついた。
『シルバー925は硬く、工具で曲げることが非常に難しい。』奥さんと口を揃えてそう答えた。
型に流し込むようなデザインではシルバー925を使うこともあるそうで、ヌットさんのところではその作業はやっていない。
同行していた友人が、持参していたオリジナルリングのデザイン見てもらうと、「できるよ!どのデザインもできる。」とその場でサンプルを作ってくれた。
針金のようなただの金属の棒が、熱を当て柔らかくして工具で曲げるを繰り返し、途中切り込みを入れ、ハンダ付のようなことをして完成し、磨かれると、お店に並んでいるシルバーリングそのものになる、その工程が見られたことは「感動した」なんて簡単な言葉で表現することしかできない自分が残念なくらい、じわじわと心の中に喜びが広がっていった。
好きで長年販売しているものだからこそ、誰がどこで作っているかを知りたかったし知るべきだったし、もしかしたら工場でライン生産されているのではという疑問も払拭したかったのだけれど、それ以上の気持ちの変化だった。
これからは自信を持って、自分の目で見たこの村のこの場所でヌットさんが作っていると答えられるし、選んだものへの信頼と愛情とともに購入した方の元へ届けられる。
この旅から戻って、見に行ったシルバーたちはいつもよりずっとかっこよく、ヌットさんの作業をみると、どれが彼の物なのかなんとなく分かる感覚があって、いつもよりたくさんのリングを選んできた。
45日の旅のハイライト。
一緒に旅した友人たちに感謝しかない。
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